赤城組残業篇

「今夜は徹夜だなー・・・」
二課の一角にある自席で赤城タロはPCに向かい手を止めることなくぼそり。
ネクタイ外しシャツまではだけ裾までだらり出しているならばいっそ脱ぎたい・・・一人だからいい、と本人は思っている。
終日禁煙の社内だが引き出しの隠していた灰皿までだしもうすでに吸殻でいっぱいの状態。
(もっとデケー灰皿にしよっかな・・・)
そういう問題ではないここは禁煙。


もうすでに他の者は居らずその一角だけがライトが付いていた。明日までには提出せねばならぬものだった。

カチャ

「あれ、まだ居たの」
予想外の登場は青梅だった。
小脇に荷物を抱え近づいてくる。

「出張お疲れさんです、ナニ今日は直帰じゃなかったんすか」
タバコに手をつけギーーーと椅子を鳴らしながら上半身だけ振り向く。

「ん、思ったより早かったからさー朝大荷物もってくんのもやだし、荷物置きに来た」
タロの席の隣の席のデスクにドカっと下ろす。
「あ、ほらご注文の品！てめーの分な。明日渡そうかと思ったけど」
立ったままガサゴソと手提げ紙袋から箱ひとつ取り出す。
「あ！買えたんだソレ！数量限定だからムリかと思ってた」
タロが前もって頼んでた現地でしか買えないスイーツ。
ありがとう！とニカッと笑い、受けとったが机にそのまま置く。
(あれ？すぐ手出さない)
なんだ、餌付けも放置なくらいイッパイイッパイな空気。

「今日はナニ？それ」
椅子を引き座りながらPCを覗き込む。

「部長にダメダし食らってやり直し」
タロはくわえタバコでお手上げと言わんばかりに両手を挙げる。

「・・・相変わらずヘタクソだな明日またダメだって言われるぞこれ」
手元の資料と交互に見ながらデスクに置いた荷物を脇に下ろす。
「ほんとウチの筆頭はデスクワーク苦手なーーこのやろ」
苦笑しながらＰＣを立ち上げる。
「・・・。」
反論はしない。青梅の資料作成、プレゼンにはいつだって敵わないのだから。



「いいっすよ、明日の午後まで時間あるし。出張上がりなんだから早く帰ってくださいって」
帰れという。
てめー一人でナニが変わるんだ。


「明日の朝飯おごりな、徹夜付き合ってやるよ、うちのリーダーがお粗末な資料だして会議で長老方からツッコミはいってフォローすんのやだしねー」
上着を脱ぎネクタイ緩め長い後髪を束ねる。


「あーーースミマセンソノトーリデス。青梅さん朝飯だけでいいの？だから好き」
にこりとしながらタバコもみ消す。
「仮眠できる時間も作ってやるからコンビニ弁当じゃなく駅前あそこのモーニングな」

「了解」