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Shangri-la  絵が描ければそこは楽園
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過去
ユカ姉ちゃん話続きです。

んもうナビゲーションつけなくちゃ自分も順番わかんねーよ。

“・・・約束して。

母さんの分まで生きるって、

俺が腹立つくらい幸せになるって・・・



それから、意地悪してごめんね先生”


それが精一杯の言葉だった…十代の自分。

母が他界して10年が経ちタロが高校三年ジロが高校二年の時、伯母から告げられた。
自分達の父親が実は生きている事、母は幼い女の子をかばって事故に遭い亡くなった事。幼い二人は実家の旅館に勤める母と三人で暮らしていた。母の死で母の姉、ユカの母の家に引き取られ育ってきた。

伯母と伯父、それからユカは幼いながらも知っていた事実を隠しながら自分の弟同然に一緒に育ってきた。いつかはきちんと説明するからお前も黙っているのだと母から言われ守ってきた。何があっても一人っ子の自分にとって大事な弟達だった。
tarojiromn_20100429000250.jpg

その[いつか]が今日。
ユカは大学の春休みで実家から呼ばれて今この空間に同席している。縁側の向こうの桜がチラホラと咲きはじめた春に。
何故、今突然。
taroya1.jpg

「…で?俺ら捨てた父親なんかどうでもいいんだよ、俺らより会社のほうが大事だったんだろ?会うつもりないし。なんで母さんの事故の話が今出るんだ?俺はうっすらだけど覚えてるけどなんなんだよ」
正座をしろと言うのにあぐらをかき伯母を睨みつけタロが言う。
ジロはタロの左で正座したまま感情ないまま…ただ座っている。ただそれだけ。
「まあ、覚えてるなら母が最後になんていったか覚えてるわね。これを読みなさい、ずっと手紙をもらってたのよ…サエコに…あなたたちの母に助けられた恩を忘れないって」
おばが差し出したのは手紙の束。

差出人は同一。

[島 エリコ]

(これって…こいつが道路に飛び出して母さんが助けようとして助けた小学生…)
相手はすでに社会人なはずだ。しかし、タロとジロの母親に関する時間は止まったままだった。

「一番上のを読みなさい」
伯母はさすがホテルの女将、姿勢正しくタロと向き合って座っている、その姿から有無を言わさず威圧感さえタロに与える。

渡された手紙の束を脇に起き指示されたとおりに一番上の手紙を封筒から取り出しカサカサ音をたて開く


「………」

「兄さん?」ジロは表情を隠したまま覗いてみることもなくたずねた。
「…今度うちの学校に音楽の講師でくるらしい…俺らかんけーないし。音楽は一年と二年の選択科目でジロは美術のほう選択だろ?」広げたままの手紙をジロに渡す。
ジロはうなずきながら手紙を受け取り黙って読みはじめる。
不機嫌さが滲み出る顔でスッと立ち上がり
「あと、俺バイト行くから、晩御飯もいらない」
キッと厳しい眼差しで伯母が「待ちなさい!まだ話が終わってないのよ、それからあなたたちのお父さんが今後の進路の…」
「いいよ!いまさらなんだっつーんだよ!俺らはここんちで育ったんだどこにもいかねーよ!邪魔なら二人で出ていくから」
障子をピシャリ閉めドスドス音をたて廊下を過ぎ去る。
ジロは手紙に目を通し終え封筒に戻した。

「この人が母さんに助けられて生きててもそれは事故だったから恨んでも仕方ないよ同じ学校に居ても関わらないと思う、…それと、俺もここしか自分の家と思ってないから。伯父さんと伯母さん、ユカ姉だけが家族だから」
手紙を伯母のひざ元へ起き「兄さんもそう思ってるはず」
伯母に笑ってみせた。
「ジロ…」
涙が溢れるのを堪えた。
母親代わりのこの十年のことを思い。

ジロは静かに居間を出た。
…我慢しなくていいのに、なぜこの弟は感情を隠すのだろう。
二人が去った廊下を眺めながらユカは
「母さん、ジロ明日必ず熱出すわよ」

「きっとそうね」

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2010'04'25(Sun)19:53 [ 妄想の絶壁 ] CM0. TB0 . TOP ▲
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